現在、日本のクルーズ人口は、20万人程度で推移している。そのマーケットの主流をなすのは、時間的にも金銭的にも余裕ができた中高年層だ。こうした年代には、幅広い趣味を持つ人が多いが、その中で根強い人気があるのが社交ダンス。1月31日、東京・有明のフェリーターミナルに停泊している「さんふらわあ くろしお」船内で行われた、ある旅行業者主催のダンスパーティーを取材してみた。
(沖田 一弘)



 前日までの小春日和がうそのように、寒風が吹き抜ける夕刻のフェリーターミナル。この日のダンスパーティー会場は「さんふらわあ くろしお」(9,723総トン、旅客定員530人)。同船は翌日までターミナルに係船され、ダンスファンのために華やかな一夜を提供する。
 乗船開始は午後6時半。待ちかねたように、手に手にダンス衣装を持ちながら船内に入ってくる。船内はすでにレセプションまわりのフロアにダンス専用の床が敷きつめられ、バンド演奏の準備も整っている。主催者によると、この日の乗船者は関東一円から集まった100人のダンス愛好家。なかには、この日のために8着のドレスを持参したというご婦人もいる。



 バイキング形式の夕食が終わると、午後7時半からフリーダンスタイムがスタートする。最初は1組2組だった物の、三々五々着替えを済ませた紳士淑女がフロアに登場、8時過ぎには満員になる大盛況ぶり。
 8時を過ぎたあたりで、主催者があいさつと今夜のバンドスタッフらを披露する。さらに、参加者に少しでも楽しんでもらおうと、老若男女を交えた8人のダンスアテンダントたちが自己紹介した。
 この後、いよいよ生バンドが入ったダンスタイムが始まる。バンド演奏は30分間隔で深夜12時まで、合わせて4回のステージが行われた。4時間を超えるダンスタイムで、「年輩の方々は疲れるだろうに」と想像していたのだが、そんな心配は杞憂(きゆう)だった。日頃鍛えた成果を披露しようと、ダンスは深夜遅くまで延々と続き、キャビンに戻る参加者はほとんどいない。
 途中、商品が当たるダンスゲームがあったり、11時からは夜食が提供されたりと、深夜まで飽きさせない趣向の数々が続いた。
 参加者のひとり、群馬県から来たという田村日出雄さんは、「ダンスを始めてから3ヶ月ぐらい。昔から船に乗るのが夢だった。今は毎月のように客船やフェリー、シーバスなど、船と名が付くものを乗りまくっている」といい、「クルーズとダンスの両方のファンだね」とうれしそうに話してくれた。
 また、この日のダンスアテンダントを努め、客船でダンスの先生もしているという林照雄さんは、「体力的なこともあって世界一周には乗れませんが、30日から60日程度のクルーズでは、ダンス教室を開くことがあります。これまで、クルーズ中に千人近くの人を教えました」と、ダンス人気の高さを語る。
 深夜まで続いたダンスのため、「まさか朝は静かだろう」と思ったが、朝食もそこそこに8時前からフリーダンスが始まった。ご年輩の方々は朝が強いとは聞いていたが、その体力には敬服する。
 午前10時の下船まで、前夜から合わせると8時間ほどのダンスタイムが設けられた。しかし、「まだ踊り足りない」といった表情で船を後にする参加者が少なくないことには、二度驚かされた。こうしたダンスファンをクルーズに取り込まない手はない。



 このイベントを企画したのは、クルーズを専門に扱う旅行業者として昨年設立されたクルーズネットワーク(本社・東京、稲葉英雄代表)。生存競争が激しい旅行業界にあって、同社はクルーズに特化した戦略を打ち出すとともに、さらにマーケットを絞り込んだマーケティングを取り入れている。
 そのひとつが、中高年のダンスを対象にしたクルーズ商品の企画だ。今回のダンスパーティーも、単なるホテルやホールを使うのではなく、フェリーとはいえ船を舞台にしたところが同社らしい。稲葉氏は、「昨年の創業を記念してダンスクルーズを企画した。本船では、2年ほど前にも別の会社で同様の企画を実施した経験があり、ブルーハイウェイラインの関係者も、快く協力してくれた」と企画経緯を振り返る。
 確かに、旅行業界でクルーズを扱う業者は多くはない。ただ、各社とも似たような顧客層を引っ張り合っているのが現状だ。市場規模も小さいから、そこに新規参入しようというのは容易ではない。
 「ならば新規顧客をつくろう」という稲葉氏の挑戦は、クルーズマーケットの底辺を拡大するための試みとして評価に値する。
 今後、同社に続くマーケット開拓型の旅行業者が複数登場すれば、クルーズ人口の拡大もさらに加速すると思うのだが・・・。

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